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マグロとサーモンが同じ味に感じる理由

寿司ネタの人気ランキングで1位、2位を争う人気のネタと言えば、マグロの赤身とサーモンだ。マグロの赤身は酸味があって旨みが強いのが特徴で、タウリンや鉄分を多く含むため、体を活性化してくれる。一方、サーモンは脂が乗っていて甘みがあり、コラーゲンやアスタキサンチンを多く含むため、抗酸化作用によって美肌に良いと言われている。味も栄養素も違う2種類の魚ではあるが、横浜国立大学大学院の岡嶋克典教授のAR(拡張現実)実験によると、多くの人が、その違いが分からなくなったのだそうだ。

岡嶋: それだけではありません。先ほどの画像処理を使って、寿司のネタを変えてみました。赤身のマグロをトロのような画像を見て食べたもらったところ、多くの人は「おいしかった」「口どけがよかった」「脂がのっていた」といった声が多かったんですよ。
土肥: 安い赤身でも楽しむことができますね。給料日前はいいかも♪
岡嶋: さらに驚く結果がでました。赤身のマグロをサーモンにして、食べてもらったんですよね。すると……。
土肥: ま、まさかのまさか……。
岡嶋: そのまさかなんですよね。赤身のマグロなのに、サーモンの写真を見せて食べてもらったところ「サーモンを食べた」と言うんですよ。赤身のマグロをトロに変えて「おいしいなあ」という人はいると思ったのですが、まさか種類の違うサーモンの写真を見て、それを食べて「サーモンだ」と思うはずがないと考えていました。話はまだ続きます。「これは赤身のマグロだ」と伝えて、もう一度サーモンの写真を見ながら食べてもらったところ、「やっぱりサーモンですよ。サーモンの香りがしますから」と答えるんですよね。
引用元 ITMEDIAビニネスオンライン通信:http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1606/08/news012_6.html

脳が味覚より視覚の情報を優先する、クロスモダリティ効果

上記の実験によると、視覚装置でサーモンを見せられた被験者は、マグロの赤身を食べても「サーモンの味がする」と錯覚するどころか、「サーモンの匂いまでした」と言うから驚きである。この現象について、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューが詳しく解説していたので紹介しよう。

このように、脳が感覚器官から同時に入ってくる多様な情報を瞬時に処理する結果として、面白い現象が起こる。それを明らかにした実験を紹介しよう。被験者は、ヘッドマウント・ディスプレーを被り、マグロの赤身の握り寿司を食べる。そのとき、現実を拡張して改変する拡張現実感の技術を使うことで、被験者にはマグロの赤身がトロやサーモンに見えている。すると、実際にはマグロの赤身の寿司を食べていても、トロに見えているときはトロの味に、サーモンに見えているときはサーモンの味に感じるのだ。同様に、ブラックコーヒーをカフェラテにして見せると、ほんのり甘味を感じるという。
(中略)
では、なぜマグロを食べていてもトロやサーモンに感じるのだろうか。これは「クロスモダリティ効果」と呼ばれる現象である。複数の感覚器官から入ってくる情報がボトムアップ処理をされる一方、脳の中にある情報と統合されてトップダウン処理で判断される際に、視覚からの情報が他の感覚器官からの情報よりも優位に働く結果、実際とは異なる判断をしてしまうということだ。先の寿司の例を見てみよう。視覚から入ってくるトロやサーモンの情報と、実際に口の中に入ったマグロの赤身の味覚情報が脳内で統合されるとき、視覚情報が優位に働き、脳に記憶されているトロやサーモンの味に関する情報と統合され、自分が食べたのはマグロではなくトロやサーモンであったと判断されるのだ。
引用元 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー:http://www.dhbr.net/articles/-/3911

このクロスモダリティ効果だけを考えると、魚介の鮮度や質よりも調理された料理がどのような形で提供されるか、つまり質よりも見た目が重要であると言える。さらに食材の見た目だけでなく、どのような場所でどんな風に味わうかで、脳の満足度が変わるということだ。漁港の食堂で獲れたてのツヤツヤした新鮮な魚介類を食べると、一層美味しく感じるのは、まさにクロスモダリティ効果と言えるだろう。

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テキスト: FUJI-KIZAI(不二機材)

FUJI-KIZAI(不二機材株式会社)は、1960年の創業以来、マグロ延縄漁の設置に必要なアルミスリーブ、圧着工具、スリーブかしめ機、テグス、釣り糸などの漁具をはじめ、プロ向け・個人向けの各種漁業資材を製造・販売しております。