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南部アフリカの自然豊かな山岳地帯が育んだ養殖マス

2014年2月に世界銀行が発表したレポートによると、2030年の漁業・養殖業生産量の60%が養殖水産物になる見込みだという。これは養殖技術の進歩に伴い、海だけでなく陸上でも魚の養殖が可能となったことに加え、消費者の食に関する高い安全意識により、完全管理の下で生産された、安全・安心な魚へのニーズの高まりなども、その理由に挙げられる。世界に目を向けてみると、意外な場所で魚が養殖されているようだ。

CNN.co.jpによると、アフリカ南部に位置する海のない国、レソトの山で養殖されたマスが、日本に輸出されているという。

大阪、京都、東京のスーパーマーケットには、アフリカ南部の内陸の国レソトの標高2200メートルの高地で養殖されたマスが並ぶ。「手付かずの自然が残るレソトは、大型マスの養殖に理想的な環境」と語るのは、アドバンス・アフリカ・マネジメント・サービスのマネジングパートナー、フレッド・フォーマネク氏だ。アドバンス・アフリカは2009年、レソトでマスの養殖を行う「ハイランズ・トラウト」プロジェクトを立ち上げた。「この高度のおかげで、ほぼ1年中、水温は(マスの養殖に)最適に近い温度に保たれる」(同氏)

引用元 CNN.co.jp:
http://www.cnn.co.jp/business/35058496.html

このレソトは、西岸海洋性気候で天候には恵まれた地域であるものの、平野が一切ない山岳地帯であるため、耕地面積は国土の約10%ほどしかない。国内産業も乏しく、失業率は約40%を超え、多くの労働者は南アフリカ共和国へ出稼ぎに出ている。そんな中で、日本を中心としたアジアに向けて高い値段で輸出可能な大型マスの養殖は、新たな産業として期待されているそうだ。

地域を活性化させる、高級水産物の完全養殖

アフリカの山で生まれたマスを、日本の食卓で食べる…と言うのは、かなり極端な話ではあるが、日本でも面白い事例がある。トリュフ、フォアグラと並んで世界三大珍味として愛されるヨーロッパ生まれのキャビアを、宮崎県が完全養殖に成功して商品化したのだ。その歴史は、1983年に旧ソ連から日本に贈られたチョウザメを、宮崎県水産試験場が引き受けたことから始まった。その後30年の研究を重ね、2011年にチョウザメの稚魚の養殖に成功、2013年にはキャビアの完全養殖を実現し、商品化にまでこぎつけた。この宮崎キャビア1983は、輸入キャビアのように低温殺菌や高塩分処理をされないため、キャビア本来のフレッシュな風味が味わえると評判で、20gで1万2000円の高値で販売されている。

長崎県は漁獲高の少ない高級魚、クエの陸上養殖に乗り出している。長崎県ではこれまでもクエの海上養殖はしていたものの、出荷サイズの1kgに成長するのに約4年もかかるうえ、クエの生存率自体が低いことが問題となっていた。そこで長崎県水産総合水産試験場が、飼育環境や餌などを完全管理できる陸上養殖により、一般的な養殖魚と同じ約2年で出荷サイズまで成長させることを目指している。長崎県は高級魚クエの完全養殖=ブランド化により、地元の水産業活性化を狙っている。

他にも、鹿児島の柚子鰤王や愛媛のみかんぶりといった、地元のフルーツを養殖魚の餌に混ぜて飼育して臭みを緩和した「フルーツ魚」など、各地で様々な養殖魚が開発されて注目されている。地域性あふれる養殖魚の開発から、今後も目が離せない。

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