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写真はフィッシャーマンジャパン公式ページより
IT業界の若者が変える漁業の未来
農林水産省が発表した2014年の漁業就業者数は、17.3万人であった。これは5年前の21.2万人から約4万人の減少である。ちなみに2015年12月公開の有価証券報告書によると、世界企業トヨタ自動車の日本での社員数が7万人というから、この数字がいかに少ないかが察せられる。政府が目指す2020年の農水産物輸出額は1兆円、水産物は3500億円と現状の2倍の数字を担うことになる。にも関わらず漁業就業者数は減少するばかりか、65歳以上が約7割を占める高齢化も進んでいるのが現実だ。そこで救世主となるかもしれないのが、漁業界に導入されつつあるIT化だ。と言っても漁獲にではなく、人事にである。地方創生のススメというサイトが、農水産業の雇用促進に、ITでのマッチングが一役買っていることをレポートしていた。
全国各地で農漁業従事者が減少していることが指摘されて久しい。子ども自身が跡を継がずに都会へ出てしまったり別の職業に就いたりするケースはもちろんだが、親世代においても苦労させたくないとサラリーマンになることを薦めるなどのケースも多いと聞く。しかしこの状況が続くと、やがて日本の一次産業は消滅し、ひいては我々の食卓まで様変わりすることになりかねない。
一方でこの数年農漁業に興味を抱く若者も少しずつだが増えてきているそうだ。そうしたなかで、一次産業への従事を希望する移住者向けのマッチングサービスが、農業・漁業それぞれで2015年末に立ち上がった。2015年12月にオープンした就農支援サイト「agriju(アグリージュ)」では、地理的な特徴や代表的な農産物など、各地域の農業の特徴・魅力を紹介。また就農・移住支援制度や支援機関なども紹介するほか、各地域の就農に関する事業の参加者募集情報を掲載する。
引用元 地方創生のススメ:http://regionwire.com/?p=5306
若い人材獲得を目標とするフィッシャーマンジャパン
地方創生のススメで紹介されているフィッシャーマンジャパンは、2024年までに三陸での漁業従事者を1000人増やすことを目標に設立された社団法人だ。ここでは漁業関連の職を斡旋しているだけではなく、漁業に興味のある若者向けに、2泊3日の短期研修プログラムを実施している。そしてまさに本日、牡鹿漁師学校を開催中だそうだ。この開催には、フィッシャーマンジャパンの他に、宮城県漁業協同組合と筑波大学の3者が手を組んで取り組んでいる。また、漁師たちが主催するフィッシャーマンBBQを、神奈川県の川崎で定期的に開催。産地直送の海の幸を生産者と味わえる、ユニークな企画も運営している。次回は来週の2月20日土曜に開催とのことなので、興味がある方は参加してみてはどうだろうか?
こんなにアクティブな漁師団体はどうやって生まれたのだろうか?そう思って調べてみたところ、その発足のキッカケは2011年の東日本大震災であった。ヤフー株式会社で復興デパートメントを担当する、長谷川琢也さんが発起人の一人だと言う。そのインタビュー記事を紹介しよう。
—ゼロベースからの発想 「フィッシャーマンジャパン」の立ち上げは?
支援団体「ISHINOMAKI 2.0」を始め、若者、よそもの(県外から石巻に来た人たち)と輪を広げていた時に、今フィッシャーマンジャパンの代表をしている阿部勝太との出会いがきっかけですね。
当時彼はまだ26歳でしたが、一度石巻を離れ、漁業以外の世界も経験しているので、客観的な視点で、漁業の課題やこうしたいと思っていることをたくさん話してくれました。 しゃべることに力がこもっている、本物感がありましたね。
水産加工の課題は聞いていましたが、漁業ってどういうもんなのか、もやもやしていたことがぱっとわかったんです。
それを機に、一緒に何かしたいと思える何人かの漁師に出会えました。
漁師の課題解決は、震災だけでなく、人口流出など本質的な地域の課題解決につながります。海産物をどういうふうに伝え、食べてもらうかということを掘り下げるために、漁船に一緒に乗ったり、漁師の暮らしを体験しながら課題に踏み込んでいきました。引用元 東北の心意気:http://dot.asahi.com/higashinihon/index.php#touhokuNavTop
東北大震災を機に、日本のIT業界をリードする企業が東北に赴き、復興支援の中から生まれたのがフィッシャーマンジャパン。ITを知り尽くした人材が、現地で漁業の6次産業化や人材獲得・育成を目指して活躍する姿には、まさに「希望」という言葉が浮かび上がる。
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テキスト: FUJI-KIZAI(不二機材)