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世界で高まる、日本産魚介類への需要
四季の移ろいを食文化に育んだ「和食=日本人の伝統的な食文化」は、その文化的価値の高さから、2013年にユネスコ世界無形文化遺産に登録された。この日本食の核となるのは、一汁三菜に表される栄養バランスのとれた食事構成にある。その主菜の代表格が、魚である。国連食糧農業機関の報告によると、1961年に1人当たり9kgであった世界の年間魚介類消費量は、2010年には18.7kgに倍増している。これは、先進国での日本食ブームにより、低カロリー食品として人気が高まったほか、発展途上国では、安価で手に入るたんぱく源として活用されるようになった事が、背景にあるそうだ。
世界市場で今後、魚介類消費量がますます増大する流れを受け、農林水産省は日本の水産物輸出高を、2020年までに1700億円(2012年実績)から、3500億円まで拡大することを目指している。そのカギを握るのが、どうやって新鮮なまま魚介類を他国へ届けられるか、という保存技術である。
ガジェット通信によると、日本では魚介類の画期的な保存技術の開発が相次いでいると言う。
千葉県流山市にあるアビーは、魚を獲った時の鮮度を保ちながら冷凍する技術を持っている。冷凍庫で冷やした4年前のタコを解凍したところ、吸盤に触った指が吸いついてくるほどの鮮度を保っていた。3か月前のものなら更に新鮮で、指に吸いついた吸盤でタコの足が持ちあがる。アビーの大和田哲男社長は、「生命体としては死んでいるのですが、細胞は生きていることが分かります」と説明した。秘密は「CAS(キャス)付き冷凍庫」という、凍らせるだけではなく磁力や光・音など8つの力を加える特殊な冷凍方法だという。この技術を視察に訪れたニュージーランドのピザ会社やイタリアの小麦会社の人たちは、一様に驚いていた。
引用元 ガジェット通信:
http://getnews.jp/archives/918112
アビーの冷凍技術にかかると、4年前の冷凍保存したタコを解凍したところ、指で吸盤に触れると吸い付くほどの鮮度であるそうだ。他にも特許技術、ウルトラファインバブルを使った福丸水産のナノ水などが紹介されている。これらの最新技術によって、鮮度を保ったまま魚介類を長距離輸送することが可能となり、日本産の高品質な魚介類を世界市場で販売できると期待されている。
日本食ブームを牽引する、お寿司の世界史
新鮮な魚介類を使った日本食の代名詞と言えば、お寿司である。日本で現在の握り寿司の形が完成したのは江戸時代の末期頃で、当時はテニスボールほどの大きさもあったそうだ。本格的な寿司の海外展開を調べてみると、アメリカのサンフランシスコで営業していた日本料理店、川福が店内に本格的なカウンターを設けてSUSHI BARを開いたのが1962年で、アメリカ本土の寿司店第1号と言われている。その後、1977年に男女で長寿世界一となった日本人が、生魚=寿司を食べていることから、アメリカで寿司が大ブームとなる。そして1980年代の日本の経済成長にあおられて、世界各地に寿司店が誕生することになった。
美食の都パリでは、1958年に日本食レストラン第1号店としてオープンした、たからが有名。開店当時は、パリ在住の日本人のための店であった。その後、1970年代のヌーベルキュイジーヌが提唱したヘルシー志向な料理の流れにより、素材の味を重視した低カロリーな寿司は、フランス中に拡大して行った。
世界に最も普及しているイタリア料理を育んだローマでは、1974年に創業した濱清が最古の日本料理店だそう。東京・浅草の割烹料理店のローマ支店として、寿司だけでなく天ぷらやすき焼きを提供して人気となり、2006年にローマで初めてミシュランガイド・イタリア版に掲載された日本料理店となった。
農林水産庁の調査によると、海外における日本食レストランの数は、2013年で推計5万5000軒にのぼる。これは2006年の同調査で2万4000軒から倍増以上の成長である。さらに、その半数以上の店舗で寿司が提供されているとも言われている。日本食が世界文化遺産に登録され、そのヘルシーさに脚光が集まる今こそ、高度な保存技術で日本から世界に魚介類を輸出するチャンスである。日本産の新鮮な魚介類を使った本物のお寿司を、世界中で味わえる日は近いだろう。
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