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養殖魚の餌として、天然魚が乱獲されている実態とは?

これまで業界ニュースでは、サバからマグロが生まれるかも知れないや、進むブランド魚の完全養殖といった魚の養殖技術の発達に関するニュースを伝えてきた。人気の高いクロマグロなどのブランド魚を養殖でまかなうことができれば、絶滅危惧種に指定された天然資源の保護にもつながり良いことずくめのように思われたが、そうとも言えないらしい。

日経電子版によると、『ファーマゲドン』の著者で、英国の畜産動物福祉団体のCEOを務めるフィリップ・リンベリー氏が養殖漁業の現在のあり方について、警笛を鳴らしているという。

天然魚資源の減少を受けて、魚の養殖は望ましい解決策だという見方に異論を唱える人はあまりいないのではないだろうか。しかし、リンベリー氏はこの見方をきっぱりと否定する。「養魚業は、海の負担を減らして天然魚を保護するどころか、サーモンやトラウトのような肉食性の魚の餌となる小魚を、海からさらに多く奪いとっている」とし、「投入する魚」対「生産される魚」という大ざっぱな比率で見ても、養殖漁業はきわめて非効率な魚資源の利用法だという。

引用元 日経電子版:
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO82827310V00C15A2000000/

上記リンベリー氏の調査によると、養殖サーモンを1トン生産するのに、天然の小魚が5トン必要となるため、養殖魚を増やすことは天然魚の減少を加速度的に進めることになると言う。

天然魚に代わる餌は昆虫の幼虫

そこで早急な課題となるのが、天然魚に代わる餌の確保だ。すでに日本の養殖漁業では、陸上で生産できてかつ、安心安全な代替餌を見つけている。それは、昆虫の幼虫である。2013年に放送されたNHK「おはよう日本」で、養殖魚の餌の最新事情がレポートされていた。

「天然の魚をもとにした魚粉ではなく、人間が作ることができる。生物の昆虫をエサにして、天然資源の枯渇を防ごうというのがひとつ。」このエサを与えたタイは大きく成長。3か月間で、通常よりも体重が20%増えていました。さらに昆虫に含まれる糖の一種が魚の免疫力を高めることも確認されました。人為的に細菌に感染させて実験をしたところ、生存率が大幅に高まったといいます。

引用元 NHKニュース おはよう日本:
http://www.nhk.or.jp/ohayou/

餌となる天然小魚が減少し価格が高騰したことで、化学飼料を与えられて育った養殖魚も近年問題になっている。人間が安価で思い通りに生産できる昆虫を餌に代替することで、養殖魚の品質までもが上がると言うのであれば、これ以上のものはない。今後の技術開発により、生きた魚しか食べないマグロの餌として、昆虫が代用される日も近いかも知れない。

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